2011年5月23日月曜日

交換留学プログラムの価値と使い方2

前回はUCの交換留学プログラム(EAP)の教育費に対するアドバンテージを書きました。今回は、短期交換留学プログラムの使い方を中国からの留学生を参考に考えてみたいと思います。


UCの”高価”な教育サービスの中で、私が学んだ一番重要なことは、人と人とのネットワーク形成についてです。以前の記事で巫山戯て書きましたが、インターネットの台頭によって知識を得る事自体には、それほど大きな価値はなくなって来ています。大事な事は、新しいアイディアを思いつく事であって、抽象的なイメージを形にすることです。そのために、人と人との協働作業は欠かせません。ネットワークを拡大していく事は、創造することに繋がるわけです。

昨今、日本人留学生が減少している事が話題を呼んでいますが、騒がれている通り中国人と韓国人学生数の方が日本人の数より多いのは実感として強いです。良いか悪いかは脇に置き、特にデービスでは、キャンパス内で日本語を聞くことは滅多にありません。反対に中国語を聞かなかった日はありません。

これはなぜか?

彼らの多くは政府から米国の先端の研究を学ぶために派遣され、研究者ネットワークを日々強固なものにしています。留学生同士の結びつきも非常に強く、異国での生活に際して発生するリスクを最小限に抑え、1、2年の短い留学生活の利益を最大限に享受しようとします。オフィスアワーに行けば、中国人が列を作っている事も珍しくありません。

では、一般的にこちらに来てる中国人が、日本人に比べ特別優秀なのかと言うと、そうではない気がします。能力自体に差はない。しかし、多くの研究室は中国人研究者であふれている。

 一体どういうことか…?

上述した通り、彼らは”価値ある”ネットワークを積極的に使って研究者のポジションを次々に引き継いでいます。例えば、化学系の研究室で一年間働いていた北京大学の友人は、北京大学のドクターコースに所属しているというだけで、TOEFLすら受験せずにデービスにやって来て、給料をもらいながら研究に励んでいました。先日出会った認知科学のドクターコースの女性も同様、デービスで研究者だった大学の先輩から情報を仕入れ、中国政府の特別なプログラムを使って研究室に配属されました。この女性研究者は、中国政府から往復のチケット代や生活費も支給されていると語ってくれました。

もう一度言いますが、彼らが特別英語が堪能で、こちらの研究者と円滑にコミュニケーションがとれているとは思えません。事実、来学したばかりの多くの中国人研究生はボスと話が通じないので、大きな困難にぶち当たるそうです。しかし、中国人同士の密な関係と勤勉な働きによって、成果を次々に上げ、信頼をかちえ米国の大学でのネットワークを拡大しています。

以上の例はEAPではないのですが参考になります。日本の大学生が、EAPを用いて教授や研究者とのコネクション作りに留学するというのは大きな目的になると思います。日本ではコネや人脈を忌み嫌う人がいますが、大学院進学を例に挙げてみると、米国ではテストで良い点をとるだけでは不十分です。

有名な教授からレコメンデーションを貰ったり、リサーチアシスタントとして研究に協力した経験があったり、その他課外活動で成果を上げていたり、つまり人とコミュニケーションして上手く段取りできる能力、姿勢が求められている訳です。米国の大学は、人と積極的にコミュニケーションする態度が新しい創造に繋がると考えているのだと思います。


実質9ヶ月間しかないEAPですが、有効活用しようと思えばいくらでも方法はあります。首都でインターンしている友人は世界銀行の人とコネクションを作りました。前回の記事の冒頭に紹介したブログの友人は州都でインターンし、こちらの州議会議員とコネクションを作りました。

コネクションをどのように使うかは本人次第ですが、使い方次第では将来大きな飛躍ができることは間違いありません。交換留学プログラムの目的を勉強以外の視点から考えてみるのも有益かもしれません。

2011年5月15日日曜日

交換留学プログラムの価値と使い方1

バタバタしているうちに、カリフォルニア大学の学生として過ごすことができる残り期間が、遂に3週間を切りました。留学生の日常を書くことを約束していた本ブログですが、この半年は生活上発生した問題にぶち当たっていたため多忙極まりなく、冬学期以降は具体的な事がほとんど書けずに終わってしまいました。申し訳ないです…。

そこで、東北大からUCDに派遣されている友人の記事を紹介しておきます。成績優秀者に選ばれたり、インターンプログラムに参加したり、模擬国連のサークルに参加したり、交換留学生が取るべき最良のアクションが書かれており、とても参考になります。

Baton blog - Tohoku Exchange 2010-2011

UCDへ来学する方は連絡をとってみるといいと思います。親身になってアドバイスしてくれると思います。

・・・

さて、今回から連続で、交換留学プログラムの価値とその使い方を書こうと思います。

ほとんどの交換留学生が無意識だと思いますが、私たちが参加しているEAP(留学プログラム)は、財政的に非常に価値があります。実際に数字で表してみると一目瞭然です。

もし日本人が奨学金の取得無しにUCに留学した場合、年間(9ヶ月)授業料は36,000ドル*近くに登ります。その他諸々の費用を含めた場合、53,000ドルにも及びます(参考1)。この数値は生活費が他のキャンパスに比べ安いUCDのものですが、もしUCLAになると60,000ドル程度必要です(参考2)。ここで注意しなくてはいけないことは、長期休みの特別講義が”無料”で受講できる日本の大学と異なる事です。米国は夏休みに開かれるサマーセッション(3カ月)を受ける場合、更に5,000ドルから10,000ドル追加で授業料がかかります。

EAP生になれば、少なくともこの36,000ドルは支払う必要はありません。加えて、UCに留学する多くの学生は奨学金を取れるので、日本の大学で勉学に励んで生活するのと同程度、もしくはそれ以下の支出で留学する事が可能になります(筑波のEAP枠が3分の1に激減したのも頷ける)。また、サマーセッションを受講せずともインターン先が決まっていれば、アカデミックトレーニングという名目で、無料でJ-1 Visaの延長が可能(EAP生は最大9ヶ月延長可)です。こういう裏の情報は全然出回っていませんね。


続く


* 5月のUC Regentsの会議によると来年度に更に32%の授業料増加もあり得るとのことです。州知事であるJerry Brownの増税案が通貨しない場合、UCシステムの予算削減が5億ドルに上るそうです。これからEAP枠もどんどん削減されていくと思われます。Budget Cutの情報からは目が離せません。

(参考)
UC Regents discuss possible 32 percent tuition increase

2011年4月3日日曜日

大震災について

3月11日に発生した東日本大震災から早くも三週間が経過しました。この間に米国では、いたる所でファンドレイジングのミーティング開かれています。日系アメリカ人や日本人留学生の団体に限らず、様々な施設が日本のために尽力しています。日本がどれだけ世界各国から好かれているか、米国にいて肌に感じる次第です。

私自身、最もショックを受けたのは筑波大学の図書館が破壊されていた事実でした。自分の母校が破壊され、此れほどまでに精神がまいるとは思いませんでした。何はともあれ知人や友人が全員無事だったことは唯一の救いでした。

私は1995年に阪神淡路大震災を経験しました。その体験を思い出すと、震災がどれだけ深い傷を残すかは想像にかたくありません。水道、電気、ガスがない生活は耐えがたいものでした。筑波に関してはインフラはすぐに復旧されたと聞いているので、胸をなでおろしています。

昨年過ごしたクライストチャーチの地震に次いで、母国での大震災でした。自然災害の恐ろしさを再確認しています。

筑波大学は例年通り運営されると発表がありましたが、余震には十分注意していただきたいと思います。留学生の身分としては、寄付やファンドレイジング以外何もできないのが歯がゆいです。

2011年2月6日日曜日

国際色豊かな筑波大学を活用せよ

早いもので、留学期間も残すところ約5ヶ月となりました。このブログ、最近の更新頻度は少ないですが、今まで2500プレビューあります。ありがたいことにそれなりに見てくれる人がいるみたいです。

このブログの目的は、主に筑波大生に少しでも留学に興味を持ってもらうことでした。留学と聞くと仰々しく感じますが、少なくとも学部の交換留学に関しては、人生をかけると言うほど大きな事ではありません。もちろん、大義名分は非常に重要ですが・・・。

クリエイティブな発想力や爆発的な行動力が求められているわけではありません。明確に必要なのは、所定の手続きを踏むという行為に他なりません。これは筑波大学に入学するのに、センター試験と2次試験を受験したのと同様です。

留学の問題は、「個人の意志」が求められている所です。それなりの進学校にいるのなら、中島らもみたいに受験期に一人離脱するというのはなかなか難しいことです。しかし、大学だと学科によって文化があり、周囲がガツガツしていない(ように見える)私の学科などは、個人の意志で道を作るのは簡単な事ではありません。「やろう!」と意気込んでも、私の経験だと3ヶ月後には忘却の彼方になっていることが多いです。

では、どうすればやる気を持続できるのか?結局、そのような文化に身を置く以外方法はありません。

まずは、留学生のチューターになってみるのはどうでしょう。これは、年に2,3回募集が学内掲示板にかかります。少しでも留学に関心があるのなら、自分がなるかもしれない留学生に会って仲良くするのがベストです。大学会館となりにある留学生センターに行ってみましょう。学内(特に生物資源)の事務と異なり、明晰なセンターの事務員が懇切丁寧に対応してくれると思います。

また日日などでは、茶の湯など日本文化講座を定期的に留学生に開いているようです。こういうイベントにボランティアとして参加して、同じ一時を楽しむといいでしょう。

留学生は独特のコミュニティを持っています。一度その中に入ってしまえば、あとは自然に、世界中から筑波大学に来学している留学生とコネクションが持てると思います。拙い英語でも、頑張って何か言おうと思えば分かってくれるものです。臆せずに、どんどんコミュニケーションしていきましょう。

あと、天2のFinlaganやその下のインド人のバーなどは留学生の溜まり場になっているので、覗いてみるといいでしょう。


 2月に入り、日も伸びて暖かくなってきました。